建設業者が売掛金・債権を回収する方法
建設業者が工事代金を回収する2つの方法
建設事業者にとって、最も重要な資金調達は、元請けからの売掛金(工事代金、資材代金など)を早期に回収するということです。
資金繰りの改善のためには、日本政策金融公庫や銀行からの融資よりも、売掛金の回収が重要です。
しかし、下請け・孫請けのように弱い立場の建設事業者が多く、元請けには強い姿勢で支払の請求ができない場合も多いが実情です。
その結果、下請け建設事業者が、工事代金や資材代金の支払いを元請け企業に請求しても、元請けが無視したり、違法に支払を先延ばしにしたりするようなケースが後を絶ちません。
このような状態を放置しておけば、最悪の場合、元請けが倒産して工事代金の売掛金が回収できなくなる危険性も生じます。
下請けの建設会社が泣き寝入りしないためには、なるべく早く、以下のような手段を実行する必要があります。
1.建設業に強い弁護士に債権回収を依頼する
2.ファクタリング会社に売掛金を買い取ってもらう
どちらの方法が良いのかは状況によって異なりますので、それぞれの債権回収方法の特徴について説明します。
1.建設業に強い弁護士に債権回収を依頼する
(1)建設業法に基づいて圧力をかける
債権回収の交渉は弁護士に依頼することが一般的です。しかし、建設業は法規制や商慣習が特殊であり、「弁護士であれば誰でもいい」というわけにはいきません。
債権回収を依頼する場合は、建設業法や建設業界の商慣習に精通した、建設業に強い弁護士に依頼することがポイントです。
そもそも、元請け企業は、建設業法を順守する義務があります。
例えば、下請けに工事を依頼するためには、建設業法第19条第1項により定められた14の事項を書面に記載し、署名又は記名押印をして相互に交付しなければならないこととなっています。
「契約書なんて交わしたことがない」という下請け会社さんも多いかもしまれませんが、これは建設業法違反です。
元請けが工事の内容を追加したり、変更したりする場合も、一方的な追加や変更はできません。相互の同意による書面の取り決めが必要です。
しかも、工事が完成して引き渡したのに、下請けに代金を支払わないのは、建設業違反の可能性が高いです(第24条の3及び第24条の5違反)。
建設業法に強い弁護士であれば、そのような建設業法違反を行政(県庁の建設課等)に通報することも含めて、様々な交渉を行えるはずです。
(2)裁判所に訴える
ただし、上記のような法律の建前は分かった上で、支払を無視している元請け建設会社も少なくありせん。その場合、最終的には訴訟を起こして裁判所で判決をもらい、強制執行等の手続きが必要になります。
裁判は強制力がありますので、確実に売掛金を回収できる手段ではあります。
しかし、デメリットとして、弁護士に依頼すると、多額の弁護士報酬が必要になること、弁護士に依頼して資金を回収するまでには、一定の期間(場合により、数カ月~)が必要になることです。
急ぎで資金が必要な場合には、弁護士に債権回収を依頼するのは適切ではないこともあります。
また、元請けを裁判で訴えることになれば、元請けとの関係も破綻して、今後の仕事が無くなる可能性も大きいです。
様々な事情から、「元請けと断固として戦う」「裁判という公正な場で白黒をはっきりさせたい」というような意思がある場合は、弁護士に依頼するべきでしょう。
2.ファクタリング(売掛金の買い取り)
もう一つの債権回収の手段は、工事代金などの売掛金を、一定の手数料を払ってファクタリング会社に買い取ってもらうことです。これを「ファクタリング」といいます。
ファクタリングの場合、最短で即日で、売掛金を現金化できますので、資金繰り苦しい場合にはメリットが大きいです。
公庫や銀行からの融資とは異なり、ファクタリングには保証人も担保も不要です。
会社が赤字決算でもファクタリングは依頼できます。
また、法人ではない個人事業の建設業者でもファクタリングは依頼できます。
一定の手数料がかかりますが、弁護士に債権回収を依頼するよりは、遥かに低額で、安く済みます。
ファクタリング会社に工事代金の売掛金を買い取ってもらうことは、国土交通省や経済産業省も推奨している資金調達方法です。
ですので、元請けとも争わずに、穏便に工事代金などの売掛金を回収したいのであれば、ファクタリング会社に売掛金を買い取ってもらう方がおススメです。
弁護士とファクタリングの違い
弁護士に依頼する場合と、ファクタリング会社に依頼する場合のメリット・デメリットをまとめました。参考にしてください。
弁護士に依頼 (裁判に訴える) |
ファクタリング (売掛債権の売却) |
|
メリット | 売掛金を請求する権利があるならば、確実に売掛金を回収できる。 裁判所の判決には強制力がある。どちらが正しいか、白黒がはっきりする。 |
手数料は、弁護士に依頼するより圧倒的に安い。 最短で即日現金化も可能。 担保や保証人は不要。 元請けとの関係を穏便に継続できる。 |
デメリット | 弁護士によって異なるが、一般的には裁判費用など多額の弁護士費用が必要。 優秀な弁護士ほど報酬が高い傾向にある。 建設業に強い弁護士が身近にいるとは限らない。 裁判には時間がかかる。 元請けとの関係は、最悪の場合、決裂する。 |
状況によっては、自社の売掛金を買い取ってくれるファクタリング会社が存在しない場合もありえる。 まずは、ファクタリングについての無料診断などを活用して、自社の売掛金を買い取ってくれるファクタリング会社があるかどうか、探す必要がある。 |