日本政策金融公庫・新創業融資申請の流れ
前回のコラムでは日本政策金融公庫の新創業融資を受ける際のポイントについてお話しました。
今回は、日本政策金融公庫で新創業融資の申請をする場合の実際の流れについてご説明します。
融資申請の基本的な流れは以下の通りです。
1.日本政策金融公庫の最寄の支店で相談
まず最初に開業予定地の最寄の支店に相談に行き、借入申込書、事業計画書(公庫の書式としては「創業計画書」という名称がついています)などの融資申請に必要な書式をもらい、融資申請の際に提出すべき必要書類を確認します。申込書の記入方法も、このときに確認します。なお、必要な書式は公庫のHPからダウンロードもできます。
2.事業計画書の作成
公庫に提出する事業計画書(創業計画書)の書式については、必ずしも公庫の書式を使用する必要はありません。
公庫が提供している創業計画書の書式中には「この書類に代えて、お客さまご自身が作成された計画書をご提出いただいても結構です。」と明記してあることからも分かります。
事業計画書は書式の体裁よりも、内容が重要です。公庫が要求している最低限の必要事項を含めて事業についてより詳しい説明が記入されているなら、むしろ独自の書式をした方が融資審査上はむしろ望ましいです。
実際のところ、公庫が提供している書式は記入スペースがとても狭いです。
そのため、事業のコンセプト・セールスポイント・競合事業者の分析・事業の将来性・売上の根拠などの重要事項を十分説明しにくいです。
そのため、私が創業融資のサポートをする場合は、公庫の書式を使用せずに独自の事業計画書の書式を使用しています。
私のクライアントは、私が提供している事業計画書の書式を使用して希望通り満額の融資が受けられていますので、公庫の創業計画書の書式を使用しなかったとしても、何か不利益を受けるようなことはありません。
皆さんが事業計画書を作成する場合も、公庫の書式に必ずしもこだわる必要はありません。
売上の根拠を含めた重要事項をしっかりと説明できるような書きやすい書式を、Wordファイル等で作成して公庫に提出してください。
以下の事業計画書の実例には、私がクライアントの資金調達をサポートするときに使用しているWordファイル形式の事業計画書のひな形(ブランクの状態)も含まれているので、参考にしてみてください。
3.融資の申し込み
事業計画書が作成できたら、正式な融資の申し込みになります。
なお、融資の申し込みに際しては、「借入申込書」のような最低限必要な定型の書類にだけでは足りません。
スムーズに資金調達を成功させたいなら、公庫から特別指示されなくても以下のような資料一式を自主的に添付して公庫の支店に提出することが重要です。
提出自体は郵送でも可能です。
融資申請の際に提出すべき資料の例
- 事業計画書(創業計画書)
- 自社を取り巻く市場環境等を分析した説明資料(いわゆるSWOT分析表など)
- 売上の予測根拠・計算根拠を示す資料
- 資金繰り表
- 試算表(会社を設立して6ヶ月経過してから創業融資を申し込む場合)
- 営業許可や国家資格が必要な業種の場合は管轄行政からの許可証や資格証明書のコピー
- 法人の登記事項証明書(履歴事項全部証明書)
- マスコミ掲載実績等がある場合は自社が掲載されている新聞や雑誌等の切り抜き
- その他事業内容を説明するのに役立つ資料
(注1)2,3の内容は事業計画書にまとめても良い。
(注2)4は売上の伸びが好調な場合と不調な場合の2通りの想定があると望ましい。
(注3)6は面談時に原本を確認される場合があるので面談時には原本を持参する。
(注4)8は代表者の前職時代のものでも可。代表者の経験や人脈のアピールに使用。
4.公庫の担当者との面談
公庫へ融資申請書類提出後、公庫の担当者から面談日について連絡があります。この公庫からの連絡の際に、「自己資金が確認できる通帳や費用の根拠となる見積書・領収書を面談日に持ってきてください」というような持参資料についての指示もあるのが通常です。
公庫担当者との面談日は、融資申込み後から1週間から10日程度後に設定されることが多いです。
基本的に、この面談の場は新しい情報を出して事業内容についてアピールする場面ではありません。既に提出された事業計画書が現実的な内容であるか、虚偽の内容がないか等の補足確認と融資申請者の本人確認程度の意味しかありません。事業計画書を提出した時点で勝負はほぼ決まっているのです。
提出している事業計画書の内容が不十分な場合に、担当者との面談によって融資申請者への評価が劇的に好転することは基本的にありません。
だからこそ、融資申請者は事業計画書の作成に注力すべきであり、この面談で質問が予想されるような事項については、予め事業計画書等の説明資料に回答を盛り込んでおくことが重要です。
そして、面談の時までに、事業計画書の内容は暗唱できる位に事業計画書を読み込むことが重要です。事業計画書に記載されている内容は数値まで記憶してしまう位に事業計画書を読み込みましょう。
そして、面談日当日に、事業計画書の内容について質問されたら、事業計画書を見ないでもスラスラ回答できるようにしておきましょう。
事業計画書の内容が完璧であれば、準備はそれで終わりです。
補足:面談時の注意点
ただし、事業計画書の内容が素晴らしくても、公庫の担当者との面談によって逆に融資申請者の評価が下がることはありえます。
融資の面談は人物審査という側面もありますので、仮に提出している事業計画書の内容が優れていても、面談時に社会人として非常識な対応をとれば当然マイナス要因になりますので以下のような点に注意してください。
- 面談の時間は厳守(遅刻しない)
- 服装はスーツが無難
- 社会人として当然の礼儀・常識を守る(言葉づかい等含む)
- 創業する分野(業種)の専門用語などは使わないで分かりやすく質問事項に答える(金融機関の担当者はあらゆる業種に詳しいわけではない)
5.公庫担当者による現地調査
面談が終わると、公庫の担当者が店舗を見に来ます(早ければ面談日の翌営業日に店舗に来ることもあります)。本当に開業しているのかどうか、事業計画書の記載内容に嘘が無いかどうか等を、実際に現場を見て確認するためです。
なお、この現地調査は、予め日時を指定される場合もあれば、日時について予告なく突然公庫の担当者が店舗に来ることもあります。
6.融資決定の通知・融資契約
現地調査終了後、1週間から10日程度後に、融資審査の結果の連絡があります。無事に融資が受けられる場合は、公庫と正式に融資の契約を締結しますので、その契約のために公庫の支店に訪問する日時等についても指示があります。
7.融資の実行
公庫と正式に融資の契約を締結した後は、融資の金額が融資申請者が指定した金融機関口座に振り込まれます(融資の実行)。
以上が、日本政策金融公庫における融資申請の流れです。
事業計画書の内容がしっかりしており、融資申請がスムーズに進めば、融資の申し込から融資の実行までの期間は概ね1カ月~1カ月半程度となります。
金融機関は「お役所」と同じような組織ですから、事業計画書を含む提出書類に説明不足や不備があると、審査の期間等が延びて資金調達までの期間が長引きます。迅速かつ確実な資金調達を臨むのであれば、融資申請の時点で提出資料は完璧にそろえておくことが重要です。