見せ金とは?
会社の設立に際しては、まず取扱金融機関に資本金を払い込まなければなりません。この金額は「定款」で定められており、それに従って払い込む必要があります。資本金は会社にとっても債権者にとって非常に重要なものです。
一方、自己資金が不足している場合、親族や知人あるいは他の金融機関などからお金を借り、定款で定められた額の資金を払い込んで会社を設立し、その後、借りたお金をすぐに返済するという方法があります。このような目的で使用されるお金のことを見せ金と言います。
会社法では見せ金を使っても罰則はありませんが、刑法上の犯罪である「公正証書原本不実記載罪」とみなされる場合があります。民事上の損害賠償責任を追及されることもあります。払い込まれたお金が見せ金であると判断されれば、会社の設立自体が無効になります。
また、平成26年に改正された会社法には、仮装払込みに関与した発起人や取締役等に対する責任が盛り込まれました。仮装の払込みをした発起人などは、仮装した金額をすべて会社に支払わないと株主としての権利を行使できないことになっています。
見せ金で資本金を大きくすれば多くの融資を受けられると思うかもしれませんが、金融機関は見せ金があるかどうかを厳しくチェックしますので、不自然なお金の動きがあれば必ずわかってしまいます。
金融機関では見せ金があるかどうかを判断するのに過去6ヵ月分以上の記帳がある預金通帳を調べます。通帳の中に出所がわからない多額の入金があれば、見せ金と判断され自己資金とはみなされません。
仮に手元にあった現金を入金したもので第三者から借りた見せ金でなかったとしても、少なくとも6ヵ月が過ぎていなければやはり自己資金とはみなしてもらえません。 ですから、6ヵ月以上の期間をかけて自己資金を貯める必要があります。
また、見せ金を使った場合にはそれを返済しなければなりませんが、その際には会社のお金を引きだすことになるので、会社から社長に対する貸付金となり、資産の部に計上されます。決算書にこの勘定科目が計上されると、金融機関からの信用が落ちるので融資が受けにくくなります。
また、貸付金に対して利息を計上しますが、多くの場合は帳簿上だけで金利の処理が行われ、利息が計上される結果、実際にはお金がないのに法人税が課されます。
このように見せ金を使って会社を設立するというのは違法性があり、しかも融資を受けるのにも会社経営にも不利になるので、自己資金は十分確保した上で会社設立を目指しましょう。