日本政策金融公庫融資と制度融資のどちらがおススメ?
公庫の融資と制度融資による資金調達は、できれば両方の準備を並行して進めることを私はお勧めしています。
ただし、日本政策金融公庫の各種融資制度の利用条件は基本的に全国一律ですが、制度融資の場合は自治体ごとに利用条件が違います。
そのため、専門家に頼らず全て独力で開業準備を進める場合などは、公庫の融資と制度融資の両方について情報収集し、検討するだけの時間が十分に確保できない場合もあると思います。
そのような場合は、まずは公庫の新創業融資の準備に優先的に取り組むことをお勧めしています。その理由は大きく3つあります。
①融資実行までの期間が短い
一つ目の理由は、公庫の方が融資実行までの期間が短いからです。
日本政策金融公庫の融資を受ける場合は、公庫の審査のみを通過すれば足ります。
他方、制度融資の場合は①自治体②金融機関③信用保証協会という3つの異なる機関の審査を通過する必要があります。
日本政策金融公庫から融資を受ける場合は、公庫という一か所の組織を審査を通過すれば良いだけなので、制度融資に比べて融資実行までの期間が短くなります。
資金調達は時間との勝負です。融資実行までにかかる期間が短い方が望ましいです。
②連帯保証人が一切不要
2つめの理由は、日本政策金融公庫の新創業融資の場合、会社の代表者さえも連帯保証人になる必要がないからです。
制度融資の場合は、法人として融資を受けるのであれば、原則として法人の代表者が連帯保証人になることを要求されます。
万が一、事業が不振に陥った場合の代表者個人にかかる負担は、制度融資の方が重いです。
③役員報酬が融資の対象になる
公庫の新創業融資の場合、法人の役員(代表者を含む)に対して支払われる役員報酬(給料)は、その額が事業規模等から考慮して適正である限り、運転資金として問題無く融資の対象になります。
売上から資金回収までの一定期間(数か月間)に、運転資金融資の必要性が認められる業種であれば、その数カ月分の役員報酬が融資の対象になるということです。
他方、制度融資の場合は、自治体にもよりますが、そもそも役員報酬を融資の対象外としているケースがありますので注意してください。
全国一律の日本政策金融公庫融資と各自治体の制度融資を単純に比較することは難しいのですが、以上の3点は、公庫の新創業融資と自治体の制度融資の違いで特に問題になりやすい点は、
金利の比較は時間の無駄
新創業融資も制度融資も中小企業支援のための低利な融資制度という点では共通していますが、 「どちらの利息が安いですか?」という質問も私はよく受けます。
確かに利率の条件だけを見ると制度融資の方が安く見える自治体も多いです。
しかし、日本政策金融公庫から融資を受ける場合は、所定の利息(金利)だけを払えば融資が受けられます。それに対して、信用保証協会の保証付きの銀行融資を受ける場合は、この信用保証協会に対して信用保証料も負担することになります。
つまり、一見すると制度融資の方が資金調達のコストが安く見える場合でも、利息と信用保証料の合計を考えれば、公庫からの融資の方が資金調達コストが安くなる可能性もあるのです。
そもそも、具体的な金利の負担額や信用保証料の負担額は、審査を通過して融資が正式に決まる段階にならないと分かりません。
そのため、架空の条件を設定して「資金調達のコストはどちらが安いのか?」という皮算用するのは、あまり有益な時間の使い方とは言えません。
金利の比較に時間を費やす位であれば、まずは公庫の新創業融資が受けられるように、しっかりとした事業計画書作成の準備を進めるべきです。
参考 ⇒ 資金調達に成功した事業計画書の実例