タンス預金は自己資金にならない
前回のコラムで自己資金が重要であることはご説明しました。
融資の審査においては、「自己資金をどのように貯めてきたのか?」という過程の客観的な証拠が求められます。
金融機関の担当者が判断材料にする一番重要な証拠は、預金通帳の資金の動きです。例えば、「独立前の毎月の給料がA銀行の口座に振り込まれており、そのうち毎月少しずつB銀行の口座に振り込んで、将来の開業資金として500万円貯めていた」というような証拠は、預金通帳を見れば客観的に証明できますので自己資金として評価されます。
上記の事例で、A銀行の口座から生活費として引き出した現金の一部を毎月少しずつ「タンス預金」していた場合、結果的に500万円貯まったとしても、「自分の給料から貯めていた」という事実が第三者から認識できません。
本当に一生懸命コツコツ資金を貯めていたとしても、通帳の記録のような客観的な証拠が無ければ、「見せ金」と区別がつかずに、融資の審査上は自己資金として認められない危険性が高いです。
自分の資産(不動産・パソコン・バイク・車・ブランド物の鞄・貴金属等)を売却して自己資金を作るときも、売買契約書や買い取り業者からの証明書を保存しておきます。売却代金は銀行口座への振り込みにしてもらうか、手渡しの場合は、すぐに自分の銀行口座に預けておき、客観的な証拠が残るようにしましょう。
生命保険等を解約・払い戻しする場合は、契約者の銀行口座に払い戻しがなされるのが通常ですし、保険解約に関する書類等の証拠があるはずなので、原則として自己資金の証明に関する心配は不要です。
過去の通帳は保存しておく
融資の審査においては、最低でも6ヶ月から1年程度は過去に遡って、通帳等の記録から資金の流れを確認されます。
そのため、開業時に融資の申請を考えている方は、通帳繰越で新しい通帳に切り替わった後も、数年前の古い通帳を決して捨てないようにしてください。
金融機関が資金の流れを確認できるかどうかが重要
自己資金の証明に関する主な注意点は以上で述べた通りです。重要な視点は、「金融機関の担当者が見たらどう思うか?」です。第三者の視点から見て資金の流れがトレースできるか否かが重要です。
・不透明な資金の流れ
・自分の給与水準からかけ離れた多額の入金がある
これら基本的にアウトです。もちろん、きちんと根拠があるならいいです。
例えば、資金の流れが複雑で一見分かりにくても、複数の預金通帳の口座を照らし合わせて資金の生まれた過程・資金が移動したプロセスきちんと確認できるなら問題ありません。
私が創業融資をお手伝いした経験では、5つの預金通帳に資金が移動した日等の付せんをはって、「この日A銀行に給料が振り込まれて、それをB銀行に振り込んで、資金がたまったからC銀行にまとめて入金して…」みたいな状況を説明したことがあります。
その結果、私のクライアントは約1000万円の希望額満額の融資を得られています。
資金の流れが複雑でも、客観的に説明できるならOKです。
突然の多額の入金にも合理的な根拠があればOKです。例えば、会社を辞めたので退職金が一気に入金された。起業用の資金にするために生命保険を解約したようなケース。
これらはもともと自分で働いた結果貯めたお金であり、その証明もできるので問題ありません。
個人事業主が確定申告していないのはアウト
意外と問題になりがちなのが、個人事業主で確定申告をしていないケースです。
個人事業主で何年か事業をやってて、規模拡大のため法人化して、融資も受けたい。
そのようなご相談も多いのですが、個人事業として確定申告をきちんとしていないケースが結構あります。また、税金を少なくしようとして、手取りを少なく見せる過少申告をしているケース。
これらは、資金を貯めた証拠が証明できません。「個人事業主として●年経営して自己資金を貯めました!」と言っても、証拠がありません。
過少申告の場合は、「こんなに少ない収入で、どうやって自己資金を貯めるんですか?」と金融機関の窓口で言われて門前払いです。
心当たりのある方は、数年分まとめてでもいいので今すぐきちんと確定申告をしてください。
ただしその場合は、きちんと顧問税理士を付けて確定申告してださい。
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厳しい言い方になりますが、税金に滞納がある事業主・自己資金に乏しい事業主は融資を受ける資格がありません。厳しい現実を知ることが資金調達成功への第一歩になります。